「水星の魔女」が盛り上がっています。
トレンドは関連用語で埋め尽くされ、毎日スレッタがミオリネとイチャイチャしながらグエルに求婚される最高のTLが構築されつつあります。
さて、水星の魔女は考察の方も日夜盛り上がりを見せています。
伏線に見えるがそうでなくとも成立する描写に視聴者は踊り踊らされ、まさにシャルウィガンダムの様相を呈してきました。
エリクト/スレッタが別人説は最早語り尽くされましたが、かと言ってスレッタの正体について確定的なことはまだ何もわかりません。とは言え、プロスペラの目的やスレッタに求められているものに関してはうっすらと見えている状態ではあります。
ということで今回は「ゆりかごの星」及びそれを原作としたOPテーマ「祝福」の描写から、「そもそもスレッタは何を求められているのか」について考察していきます。
それとっくにわかってない?
※注:当記事は「ゆりかごの星」「祝福」の語り手である「ガンダム・エアリアル(以下エアリアル)」の発言は正しいことを前提に話を展開します。
「ゆりかごの星」はエアリアル視点でスレッタの成長とプロスペラの思惑を描いた小説です。
そして、細かい部分ではありますが違和感のある描写がありました。
11歳になったスレッタが僕のコクピットに飛び込んでくる。
「ゆりかごの星」 著:大河内一楼 より
「お母さん、今度はどれくらいいられるの?」
「あなたの誕生日まではいられる予定。だから今年は、去年とあわせて二年分のパーティをやりましょう」
「やったあ!」
スレッタが弾けるように言った。
でも、スレッタがお母さんと誕生日を祝えたのは、この11歳の時が最後になってしまった。
「ゆりかごの星」 著:大河内一楼 より
エアリアルの視点ではスレッタは「11歳になった」のに対し、スレッタ視点ではこれから誕生日が来ます。
数えで11歳と言われればそこまでですが、何か意味があると仮定してこの認識の相違について考察していきます。
最初に述べたように、エアリアルは嘘を言っていないという点は大前提です。
つまり、このスレッタがエリクトであれ別人であれ、「エアリアルはスレッタが11歳になったと認識している」と仮定すると、間違っているのはスレッタ/プロスペラということになります。
ここでエランとのやりとり*1を思い出してみましょう。「誕生日なんて無い」というエランに対し、スレッタは「お母さんに教えてもらってないってことですか……?」と返していました。
普通、誕生日は親に教えてもらいます。裏を返せば、親が間違えていれば子も間違えます。もしくは、親が嘘をつけば誕生日を誤認させられます。
ここで、プロスペラの目的について振り返ります。
プロスペラの最終的な目的は「ゆりかごの星」で「復讐」だと明かされています。
復讐なら僕らだけでやろうよ。スレッタを巻き込まないで。
でも、お母さんに僕の声は届かない。
「見ててね、みんな。私たちの娘が、仇を取ってくれる!」
「ゆりかごの星」 著:大河内一楼 より
そして、その復讐の「扉」とされているのは他ならぬミオリネです。
「ただいま、エアリアル。喜んでちょうだい。扉が開いたの」
扉? なんのこと、お母さん。
「アスティカシア高等専門学園でモビルスーツの決闘が行われるわ。それに勝った人間が、デリングの一人娘と結婚するの」
「ゆりかごの星」 著:大河内一楼 より
ここで注目したいのが、スレッタの「2年」という設定です*2
スレッタは「学校に行くのが初めて」と発言しています*3。水星でも勉強はしていたようですが、普通に通わせるだけであれば1年からの方が妥当に思えます。
アスティカシア高等専門学校はベネリットグループ傘下の企業推薦が入学条件となっている*4のである程度の融通は効きそうですが、何より先に考慮されるのは年齢でしょう。
つまり、昔からミオリネ(≒デリング)と接点を作るべく、スレッタの年齢(学年)をミオリネに合わせていたのではないでしょうか。作るべくというよりは、可能性を上げていた程度に留まるとは思いますが。
そして、昔から復讐のために動いていたと仮定すると、他のシーンも見え方が変わってきます。
「ただいま、エアリアル。喜んでちょうだい。扉が開いたの」
扉? なんのこと、お母さん。
「アスティカシア高等専門学園でモビルスーツの決闘が行われるわ。それに勝った人間が、デリングの一人娘と結婚するの」
「ゆりかごの星」 著:大河内一楼 より
プロスペラは「決闘が行われているの」ではなく「行われるわ」と発言しており、これは「これから起こる」と読み取ることも出来ます。であれば、そもそも「決闘」もしくは「ホルダーがミオリネと結婚する」自体、プロスペラが裏で何かしら糸をひいた可能性も否定出来ません。
上記のシーンはスレッタが16歳の時であり、ミオリネは既に入学しています。全ての生徒が傘下企業の推薦である以上、ベネリットグループの一人娘への接近を命じられた生徒がいても不思議ではありません。デリングに直接ということはなくとも、間接的に誘導することは不可能ではないでしょう。何せプロスペラは、傘下グループの中で「出世」しています。
お母さんは出世してますます忙しくなった。地球圏に行っていることも少なくない。
「ゆりかごの星」 著:大河内一楼 より
何より、「モビルスーツ同士の決闘の勝者がミオリネと結婚する」は非常に都合が良いはずです。何しろ彼女には、優秀なパイロットとガンダムである「娘たち」がいるのですから。
無論、それだけをアテにしていたというわけではないでしょう。しかし、優秀なパイロットとモビルスーツを「復讐」に繋げるという画を描いていたのだとしたら、過酷な水星も「逃げてきた」のではない可能性があります。
スレッタが「連れられて来たこの星」は、過酷な環境下でさえ対応の出来る「優秀なパイロット」を育成する、まさしく「ゆりかごの星」と言えるでしょう。