大抵のものには「限界」があります。
デッキは60枚までしか入れられませんし、限界を超えた声優は流石に引退、課金は大体家賃までが限界ですし、「課金は家賃まで」が既に限界の発言です。
僕もたまに限界を超えようとエクストラに20枚くらい入れて「バレへんやろ」とオフ会に参加したりしますが流石に良心が傷んでやめます。そのくらい、限界を超えるのは難しいです。うっかり16枚は一回ありました。
そして遊戯王カードも、イラストの枠に入り切らなかった部分を後から公開したりと、「枠」の限界に囚われています。それはテキストも一緒です。
以前に、「遊戯王はテキスト枠の関係で表記を変えているのでは?」と考察したことがあります。
本来のテキスト表記にするとテキスト欄に入り切らないから、やむを得ず別の表記に変えているのでは、という内容です。
そして今回、再びテキスト枠の限界に挑んだ勇者が生まれました。
席取-六双丸くんです。
※再生したらすぐにテキスト出ます。
席取-六双丸
①:相手バトルフェイズ開始時に発動する。サイコロを1回振る。お互いのメインモンスターゾーンをこのカードから見て時計回りに1つ先から1~6とし、メインモンスターゾーンのこのカードを出た目のゾーンに移動する。移動先にモンスターが存在する場合、それをこの下に重ねてX素材とする(X素材を持つモンスターの場合にはそれらも全て重ねる)。このX素材が6つを超えた時、自分はデュエルに勝利する。移動できない場合、または移動先のモンスターをX素材にできない場合、このカードを墓地へ送る。
「このX素材」という表記が誤解を生みやすいですが、おそらくは「この効果で重ねたX素材」でしょう。相手バトルフェイズ開始時という点も含めてあまりに条件が厳しいです。バトル入らんやろ。
それはさておき、このカードも枠内にテキストがびっっっっっっっっっっっっしり書き込まれています。ヘブンズドアーやデスノートを彷彿とさせます。
しかしこの関取、これでもダイエットしたんですよという形跡がこれでもかと残っています。スリムな理想体型の「No.101 S・H・Ark Knight」「No.75 惑乱のゴシップ・シャドー」くんたちと比較してみましょう。
No.101 S・H・Ark Knight
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードのX素材を2つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚された表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。②:フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードのX素材を1つ取り除く事ができる。
遊戯王 オフィシャルカードゲーム データベース より
No.75 惑乱のゴシップ・シャドー
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:1ターンに1度、相手がモンスターの効果を発動した時、このカードのX素材を2つ取り除いて発動できる。その効果は「お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする」となる。②:このカード以外の自分フィールドの「No.」Xモンスター1体を対象として発動できる。このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする(このカードがX素材を持っている場合、それらも全て重ねてX素材とする)。
遊戯王 オフィシャルカードゲーム データベース より
席取-六双丸
それをこの下に重ねてX素材とする
No.101 S・H・Ark Knight
そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする
「それ」「この」という伝わるか伝わらないかギリギリのラインを攻めている感じがたまりません。10文字ダイエットしました。
席取-六双丸
(X素材を持つモンスターの場合にはそれらも全て重ねる)
No.75 惑乱のゴシップ・シャドー
(このカードがX素材を持っている場合、それらも全て重ねてX素材とする)
「そのカードがX素材を持っている場合」でいいのをちょっと捻って文字数を節約しています。8文字減っています。
ついでに、「最近ちょっとお肉ついてきた気がするな」って二次創作とかで言わされてそうな「ゴーストリックの駄天使」のテキストとも比較してみましょう。
ゴーストリックの駄天使
このカードは「ゴーストリックの駄天使」以外の自分フィールドの「ゴーストリック」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。また、このカードが持っているX素材の数が10になった時、自分はデュエルに勝利する。①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「ゴーストリック」魔法・罠カード1枚を手札に加える。②:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。手札の「ゴーストリック」カード1枚をこのカードの下に重ねてX素材にする。
遊戯王 オフィシャルカードゲーム データベース より
席取-六双丸
X素材が
ゴーストリックの駄天使
X素材の数が
ここも地味に2文字削られています。仕上げのパセリくらいの存在感です。
そして動画の実物のカードのテキスト欄に注目してください。
1文字も入りません。
つまり「席取-六双丸」は、これだけ無理なダイエットをしてなお超ギリギリという奇跡のバランスで成り立っているカードなのです。
20文字って「①:相手バトルフェイズ開始時に発動する。」と同じですからね。効果一つ削られたと言っても過言ではありません。
「席取-六双丸」自体は今までに無い効果で(使えるかどうかは別として)ユニークな効果を持っています。
そして、そのユニークな効果を支えているのは、間違いなくデザイナーによるテキストのダイエットの苦労なのです。それは、他のカードでも見かけることがあります。
これから先、「なんか変な表記だな」と思ったら、テキスト欄を眺めてみてください。
そこにテキストが詰まっていたら、その表記はデザイナーの努力の跡なのかもしれません。
どうか皆さん、遊戯王のテキスト欄の「余裕の無さ」を愛せるようになってください。
僕はもう「席取-六双丸」のテキスト欄が愛おしくてたまりません。
使わないけど……。