かしこまメガトンパンチ

遊戯王とマンガ中心の雑記ブログ

【遊戯王】「霞の谷の雷鳥」と「ギガンテック・ファイター/バスター」はどこが違うのか書いたけど謝罪しました

※今回は「テキストから処理の違いを考察する」という話ではなく、あくまで「何故その違いが起きているのか」「改善が難しい理由」に関するコラムになります。
裁定変更されたので謝罪しました。

 

タイトルめっちゃ長くなりました。皆さんこんにちは。

本日は、TLを騒がせている、

 

《霞の谷の雷鳥》と《ギガンテック・ファイター/バスター》が(ほぼ)同じテキストであるにも関わらず裁定が異なる、さて、何故?

 

というおはなしです。それぞれのテキストはこちら。

 

ギガンテック・ファイター/バスター
このカードは通常召喚できない。「バスター・モード」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、全ての相手モンスターの攻撃力は、自分の墓地に存在する戦士族モンスターの数×100ポイントダウンする。このカードが特殊召喚に成功した時、自分のデッキから戦士族モンスターを2体まで選択し墓地へ送る事ができる。また、フィールド上に存在するこのカードが破壊された時、自分の墓地に存在する「ギガンテック・ファイター」1体を特殊召喚する事ができる。

霞の谷の雷鳥
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが手札に戻った時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したターン、このカードは攻撃できない。

 

そして、両者の裁定としては、

  • 装備状態の《ギガンテック・ファイター/バスター》が破壊された場合→効果は発動する
  • 装備状態の《霞の谷の雷鳥》がバウンスされた場合→効果は発動しない

となっております。
確かに、同様のテキストであるにも関わらず両者の裁定は異なっているように見えます。

しかし、《霞の谷の雷鳥》のQ&Aにはこのような記載があります。

モンスターゾーンに表側表示で存在する「霞の谷の雷鳥」自身が手札に戻った場合に必ず発動する効果です。

はい解決!

で終われば流石に記事は書きません。
次から本題に入っていきます。

 

 

そもそもテキストがどうやって出来ているか

ところで、チャットでの問い合わせやメールをした際、もしくはそれらのキャプチャーを目にした際に、このような一文を目にしたことはありませんか。

 

カードによって処理が異なります。

 

さて、この一文が言い訳ではないとすると、この一文が生まれるために必要な要素は何だと思いますか?

 

 

当然ですが「カードごとに処理が設定されている」ですね。

カード(効果)をデザインする際に、普通の感覚で言えば

  • カードのテキストを作る
  • カードの処理を設定する

という順番で設定していくと思われます。
ですが、幾度の誤裁定や「テキストと処理が異なる」という話を鑑みるに、下の図のようにデザインされている可能性が考えられます。

 

画像1

 

上記の「カードごとに処理が設定されている」が真と仮定すると、基本的に全ての(効果のある)カードに「カードの処理」が設定されており、それを「テキスト」という形でカード化していることになります。
今回の話で言えば、「《霞の谷の雷鳥》はモンスターゾーンに表側表示で存在する《霞の谷の雷鳥》自身が手札に戻った場合に必ず発動する効果』という部分ですね。

テキストありきでカードの処理が決まるのではなく、まずカードの処理があり、そこからテキストが生み出されている、という考え方です。

 

この仮定が正しければ、その昔に存在した《メンタルマスター》と《イレカエル》の問題は、「カードごとに処理が設定されている」「テキストに不備が存在した」「カードの処理を確認出来る公式DBが存在しなかった」という3点セットにより引き起こされたと考えることが出来ます。

 

そして、カードの裁定は「カードの処理」に則って判断されると考えると、《霞の谷の雷鳥》はそもそもテキストが間違っている、ということになります。

 

さて、魂のしもべの記事でも書きましたが、テキストに含まれる情報は、基本的なルールであれば削ったりもしていますし、エラッタでわかりやすくもなっています。

エラッタでわかりやすくなる中には「基本ルール」「カードの処理」をテキストに明記する場合もありますし、昔のカードのテキスト不備を修正する場合もあります。

つまり、今回の問題の原因として、

  • 《霞の谷の雷鳥》は「カードの処理」として「モンスターゾーンに表側表示で存在する《霞の谷の雷鳥》自身が手札に戻った場合に必ず発動する効果」という処理が設定されている
  • しかし、テキストでは「フィールド上に表側表示で存在するこのカードが手札に戻った時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する」と表現されてしまっている
  • エラッタされたカードが発売されていない

という点が考えられます。

 

エラッタしたカードを販売して採算が取れるか?というおはなし

では、エラッタされたカードを販売すれば解決するのでは? という話になりますが、そう簡単には行きません。

《霞の谷の雷鳥》は《ユニオン・キャリアー》とのコンボにより価値が見出され時の人となっていますが、以前での使用率はどの程度だったのか、という問題があります。

ぼくの好きなカードに《鉄のサソリ》というカードがあります。
テキストはこちらです。

 

機械族以外のモンスターがこのカードを攻撃した場合、そのモンスターは(相手ターンで数えて)3ターン目のエンドフェイズに破壊される。

 

そして、公式DBでは以下のように記載されています。

 

■「鉄のサソリ」の効果は誘発効果です。
■機械族以外のモンスターが「鉄のサソリ」自身を攻撃した場合、そのダメージ計算後に発動し、チェーンブロックが作られます。(「鉄のサソリ」が戦闘で破壊される場合でも発動する効果です。)

 

この処理を正しくテキストで表現する場合、「機械族以外のモンスターに攻撃された場合、ダメージ計算後に発動する。相手ターンで数えて3ターン目のエンドフェイズにそのモンスターを破壊する」というテキストになります。

 

さて、このカードをエラッタしたとして、それがパックの売れ行きに寄与するでしょうか?

 

販売元のKONAMIも慈善事業をしているわけではないので、「販売するパックは採算が合うかどうか」という視点は必ず持っています。

ぼくも詳しいわけではありませんので断定は出来ませんが、「採用率が低く売上に貢献しないカードをエラッタした上で再録する」より、「公式DBにカードの処理を掲載する」方がトータルとして安上がりなのではないでしょうか。

つまり、「処理は個別にお問い合わせください」「個別にルールを確認して下さい」という返答は「本来はエラッタで対応すべき案件であるが、このカードを再販しても採算が合わない(のでその対応が出来ない)ため、申し訳無いが使用するカードであれば公式DBでカードの処理を確認してほしい」という内情を含んだ返答である、と考えられます。

 

テキスト通りの処理に修正するコストとリターン

さて、エラッタの対応が出来ないのであれば、「そもそも『カードの処理』を『テキスト通りの裁定』に変更する」という解決法があります。

ところで、先日遊戯王カードの種類は一万種類を突破しました。とんでもない種類のカードがありますね。

「テキスト通りの裁定に変更する」ために必要な労力ですが、通常モンスターが700種類弱ありますので、単純計算でざっと9300枚のカードを確認し、テキストと照らし合わせる必要がありますね。

 

さて、この労力(ほぼ人件費)に対し、返ってくるリターンはどの程度見込めるでしょうか。
「テキストとデータベースを全て照らしあわせ、全てテキスト通りの処理に修正しました!」として、売上が倍増するでしょうか。感動したユーザーから多額の寄付金が届くでしょうか。当然、答えはNOです。

言うまでもなく、KONAMIは利益を出すことを目的とした立派な「企業」です。かけた人件費に対してのリターンが全く見込めないのであれば、そこにGOを出すためには相当な決断を迫られることになります。

つまり、「テキスト通りの処理に修正する」という解決法は現実的でありますが、企業としての視点で見れば非現実的でもあるのです。

 

育成コストと「人材依存」のリスク

今回の《霞の谷の雷鳥》のように、問い合わせが来た結果、テキストと処理の齟齬が発覚したのであれば、テキストから判別出来るように逐一「カードの処理」を変更するという解決法も考えられます。

では、「テキスト」と「カードの処理」が異なることを正確に判別するために必要な要素は何でしょうか。

「ルールを正確に把握している人材」ですね(当然、部署の人材はルールはちゃんと把握していると思いますが)

 

ところで皆さん、遊戯王、簡単ですか?

 

おそらく殆どの方が「難しい」と答えると思います。私もそう思います。
多岐に渡る処理、覚えることの多いルール、特殊裁定etc...

さて、それら全てをマスターした人材を育成するのに必要なコスト(時間と費用)はどの程度かかると思いますか?

もはや全く想像もつかない上に、人間ですので「ミス」もつきまといます。

また、育成した人材が事故などで仕事が出来なくなった場合、それまでのコストが全て無駄になります。

そして最も重要な点として、「人(個人)」に依存したシステムを構築した場合、極端な話「ルールの問い合わせに対応するために知識を蓄えた人材が全員仕事が出来なくなった場合、部署が機能しなくなる」リスクがあります。

わかりやすく、喩え話をしましょう。

  • 一人のベテランが職場を回しており、その人が休むと仕事が回らなくなる
  • 仕事がほぼマニュアル化されており、マニュアル通りに動けば誰でも仕事を回せる

どちらの職場が「企業の体制」として健全でしょうか。
もっと言えば「企業として長く継続するために求められる体制」はどちらでしょうか。
当然、後者ですよね。

これを事務局に当てはめ「テキストとカードの処理の齟齬をなくすため、知識を蓄えた人材に裁定を一任している状態」にしたと仮定すると、そのスタッフが急に辞めたり他の原因で仕事が出来なくなった場合、事務局が機能しなくなる恐れがあります。

となると、「その状態」を目指すこと自体がそもそも企業としてはNGとなります。
そのリスクを背負ってまで「リターンは無いが健全な状態」を目指すメリットはありません。

「既に設定されている『カードの処理』に則って返答を行い、詳しい内容については回答を控える」≒「誰でも仕事を回せる」状態にしている(なっている)今の現状こそが、「企業体制としての理想」ではあるのです。

OCG事務局でチャットサービスを行っていますが、これも「『カードの処理』を確認し、判断出来れば返答を行う。出来なければメールでの問い合わせ(別部署/専門部署)を案内する」というシステムとして設定すれば、多少の研修期間を経たバイトでも可能です。

勿論、「ユーザーに対して不親切」ではありますが、「そこを改善して得られるリターンがあまりにも少なすぎるので改善しない」という判断は、正直なところ企業としては至極真っ当な判断だと思われます。

 

残念なお話ではあるんですけど!!!!!

 

今回のポイント

  • そもそも事務局は「テキストありき」ではなく「カードの処理(非公開部分含め)」で裁定を下している可能性がある
  • そのため、「テキストありき」の考え方だと認識が食い違うことがある
  • エラッタの対応はコストがかかるので公式DBの更新に留めている
  • テキストと裁定の統一はコストとリターンが釣り合わないため踏み切っておらず、随時更新するためにはコストとリスクが発生するので企業としてGOは出にくい=変更の可能性が低い

といったところでしょうか。まあ、「だから今の状態を享受しよう」という話でもないんですけど。長々とお付き合い頂きありがとうございました。

今の事務局の返答の体制が良いとは思いませんが、企業としての視点で見ると合理的ではあるので、正直なところ「変わる可能性は低い」と個人的には考えて(諦めて)います。

しかし、そこが遊戯王を難しくしている点であるのは確かですので、最後に遊戯王のルールを紹介・独自のコラムや視点で解説するブログを解説して終わりたいと思います。

 

https://shakeboy.hatenablog.com/

 

このブログかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!

 

おしまい。