かしこまメガトンパンチ

遊戯王とマンガ中心の雑記ブログ

アニメ「かげきしょうじょ!!」最終話は非常に綺麗な改変だった けどやっぱ原作読んでって話

ぶっちゃけ端折られてはいる。

「歌があるから」「声優の演技が」で原作を遥かに上回る出来になったかと言えば正直なところNOかもしれない。

ただ、(話数の制約もあり)端折らざるを得ない中で、少しの改変で非常に綺麗に纏めていたことはしっかりと語りたい。

最終話のサブタイトル「かげきしょうじょ!!」を見た時、それは当然渡辺さらさを指すものだと思っていた。

原作6巻(アニメ最終話)のキモはまず間違いなく「渡辺さらさのティボルトの成立」であり、そこに至るまでの「歌舞伎からの卒業」や「暁也(及び歌舞伎)への感情」が美しく編まれているのが特徴だ。

だからこそ、「かげきしょうじょ!!」というサブタイトルは、歌舞伎少女(敢えてこう表現する)だった渡辺さらさが、歌舞伎から卒業し、紅華に入学・「歌劇少女」になった、その部分をピックアップしたものだろうと想像するのは自然なことのように思える。

しかし、意外にもそのシーンは短くまとめられていた。開始7分で終わり、その後のお話が15分ほど続く。そもそも意外という表現を使っているのが間違いなのだろう。

件のシーンはほぼ原作に忠実であり、必要な描写はしっかりと描かれている。原作を映像化したらこうなります、という100点の回答であるのは間違いない。アニメ化にあたっては原作者もシナリオの打ち合わせに参加したとのことで、サブタイトルの「かげきしょうじょ!!」もある程度意図してつけられたものであるのは間違いない。

news.yahoo.co.jp

原作の斉木もシナリオ打ち合わせに参加。「例えば、愛が男性を苦手になったのには重い理由があり、どう描いていくかは難しくもあったんですが、斉木先生から『私はこれを描きたかったんです』という話があって、ならばこちらも覚悟を決めようと。細かいセリフの変更なども柔軟に対応していただきました」

愛の過去の描写がエグかったの納得言ったわ。

13話という決められた話数のなかで、どうしても原作から割愛しなければならない。だけど、はしょったと感じさせず、かつ登場人物の心の機微を大事に拾っていく必要がありました。

実のところ、原作からはかなりシーンが削られている。表現上、シーンを前後させていることを踏まえても、細かいシーンや発言が割愛されている。原作では彩子が紗和を気にかけるシーンもあったが、それもカットされていた。

しかしそんな中で、原作と明確に変わっているシーンが一つある。さらさと紗和の握手のシーン(及び以降)である。

原作では握手が中断されたのに対し、アニメ最終話ではしっかりと握手を行っており、紗和が気持ちに一区切りをつけたことを強調している。

最終話で敢えて、主人公ではない人物にフォーカスしたのだ。

つまり、最終話の「かげきしょうじょ!!」は登場人物全員を指しているのだろう。

渡辺さらさは歌舞伎から卒業が描かれた。夢も目標もなかった愛は、役を取れなかった悔しさを滲ませ、また「さらさと銀橋に立つ」と明言している。

紗和は劣等感との折り合いをつけ前に進み、彩子は役を勝ち取る。薫はコネコネうるせえなイースト菌でもコネてろと過激な少女になっていた*1

アニメ最終話は、多くの割愛と少しの改変で登場人物の成長にフォーカスした、非常に綺麗な改変だった。

 

わけだがやはり原作好きとしては原作を読んでほしい。

今話した内容はあくまで「藤井聡太は飛車角落ちでも強いしなんならそっから新戦術が生まれた」みたいな話で、制約無しで戦った方が強いのは当たり前だ。

ティボルトのシーンのコマ割りなど原作(マンガ)特有の魅力を語るとキリが無いが、やはり原作を読むべき大きな理由はスピンオフの存在だろう。

アニメ八話「薫の夏」がそれにあたるが、単行本では(アニメ収録の)6巻までに星野薫・里美星・野島聖のスピンオフを巻末に掲載している。

しかしアニメでは薫のスピンオフのみを収録、残りの星・聖はBDの特典のドラマCDとなっている(ついでに言えば単行本7巻収録の中山リサのスピンオフもBD4巻特典になっている)

このスピンオフ、本編に直接関係無いとはいえかなり重要な話をしている(特に中山編)ので、アニメが気に入ったのであれば是非単行本に手を伸ばしてほしい。

なお個人的なお気に入りは里美星のスピンオフで、里美→ファントムの「私の時もやさしくしてほしかったな」の辺りの詳細が描かれている。

f:id:shakeboy:20211003232256p:plain

里美星スピンオフ扉絵

f:id:shakeboy:20211003233700p:plain

現在

このスピンオフ、詳細は単行本で確認してほしいが「えらいな」のシーンは映像でこそ生きるシーンだと思うので是非単行本で味わってほしい。

 

ちなみに本編にも少しだけ触れておくこととする。

「かげきしょうじょ!!」の魅力の一つはW主人公の視点で物語を進めている点にある。

さらさは天真爛漫ザ・主人公のような振る舞いをする一方で悩むことも多い。そして、さらさの内面を描くようなシーンでは(敢えて)愛の視点で描かれていることが多い。

愛は他人を解することができず、歌舞伎鑑賞のシーンでも「私には解らない」と述べているが、それらの表現が読者に想像の余地を残している。

同時にさらさの内面をある程度秘匿することで、渡辺さらさというキャラクターを「単純で天真爛漫で真っ直ぐなキャラクター」から上手く逸脱させることに成功している。わかりやすく言えば、ミステリアスなのだ。どこか遠い出来事を追想しているような、何か悟ったような言動をたまに(愛に)することが、渡辺さらさというキャラクターを画一的なキャラクターから脱却させている。

f:id:shakeboy:20211005005015p:plain

シーズンゼロ11幕 愛視点でさらさの表情を自然に隠している

一方で愛は、8巻以降は完全に主人公のポジションで描かれている。

当初は夢も目標もなくほぼ逃避で入学、感情表現も乏しく「ロボ」と呼ばれる彼女だっただけに伸びしろしかなく、愛の挫折と成長が非常に小気味よく展開されていく。

画力の成長に伴い表情も豊かになっていく彼女がまた熱いので、(アニメ二期がいつやるかわからないので)是非単行本に手を伸ばしてほしい。

f:id:shakeboy:20211003234120p:plain

誰これ?

 

ちなみに個人的な推しはマッスー。たまーーーーーに出てくるサブキャラ(聖と同じ高校らしい)だが妙に可愛い。なんなんだマッスー。本名教えてくれマッスー。

f:id:shakeboy:20211003235634p:plain

マッスーなのに

*1:これが言いたかっただけ